強引上司の恋の手ほどき
出発して十分くらい経った頃だろうか。目の前の自動ドアが開いて課長が歩いてきた。
「おい〜誰だよ、この座席決めたの」
それは、私も同じ気持ちだけど課長はどうしてここに来たんだろう。たしか一両前の車両だったはずだ。
首に手を当てて、顔には“まいったな”と書いてある。
「あーっと、いたいた。菅原、席代わって」
「は?……どうしてですか?」
出発したばかりなのに、なにかあったのだろうか?
「俺の隣、加藤なんだよ。陰謀としか思えん」
でも確か、加藤さんとは普通に話する間柄のはずだけど。
「アイツ、乗車前からずーっとしゃべり続けてるんだぜ。俺、眠いのに目をつむった途端に話しかけられてたまったもんじゃない。だから」
課長が私の肩に手を置いた。
「代わってくれ。頼む」
さっきまでの軽い口調ではなく、真剣な声に私は「はい」と頷いた。
そして荷物を持って立ち上がると、後ろの席の中村くんと目が合ってしまう。
昨日まで向けられなかった冷たい視線に唇を噛んで耐えた。
「おい〜誰だよ、この座席決めたの」
それは、私も同じ気持ちだけど課長はどうしてここに来たんだろう。たしか一両前の車両だったはずだ。
首に手を当てて、顔には“まいったな”と書いてある。
「あーっと、いたいた。菅原、席代わって」
「は?……どうしてですか?」
出発したばかりなのに、なにかあったのだろうか?
「俺の隣、加藤なんだよ。陰謀としか思えん」
でも確か、加藤さんとは普通に話する間柄のはずだけど。
「アイツ、乗車前からずーっとしゃべり続けてるんだぜ。俺、眠いのに目をつむった途端に話しかけられてたまったもんじゃない。だから」
課長が私の肩に手を置いた。
「代わってくれ。頼む」
さっきまでの軽い口調ではなく、真剣な声に私は「はい」と頷いた。
そして荷物を持って立ち上がると、後ろの席の中村くんと目が合ってしまう。
昨日まで向けられなかった冷たい視線に唇を噛んで耐えた。