強引上司の恋の手ほどき
また胸のなかで膨らんでいく課長への思いを、どうすることもできずにいた。

思わず顔が赤くなってしまう。

中村くんのように、食事やデートをしたわけでも、ましてや好きだと言われたわけでもない。それでも中村くんと付き合っているときよりも何倍も胸が甘く締め付けられる。

これが本当の恋なんだ。

緩む頬を変に思われないように、二、三度頬をペチペチと叩いた。

誰にも見られてないよね……?

私は急に心配になって、周りをキョロキョロ見回す。するとひとりの女性と目があった。

総務の大西さんだ。

直ぐに外されるはずの視線は、そのまま私に向けられている。……それもたっぷりの敵意が込められて。

いたたまれなくなった私は、すぐに下を向いた。

彼女の態度の理由は課長のことが原因だろう。

けれどたとえ睨まれたとしても、恨まれたとしても、私の課長への思いは止めることが出来ない。

それだけは、鈍い私でも分かった。
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