強引上司の恋の手ほどき
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神様がくれた仙台でのふたり初めての夜をすごした翌朝。
俺の腕の中では千波がぐっすりと眠っていた。
未明まで見せていた女の顔とは違う、腕のなかで眠っているそのあどけない表情は俺の庇護欲を満たした。
「やっと、俺が好きだって認めたな」
軽く鼻をつまんでやると、顔をゆがませた。腕の中にいる彼女のそんな表情さえも貴重に思える。
正直、千波から告白させるように仕向けたのは男として卑怯だと思う。だが中村との付き合いの始まりを考えると、俺は流されて千波が俺のところに来るのではなく自らの意思で俺のものになって欲しかった。
相手に合わせようとするのは彼女のいいところだとは思うけれど、俺との恋愛にそれは必要ない。
もっと自分中心で、ワガママでいて欲しい。俺はそのすべてを受け入れるつもりだった。
肩肘はらずに彼女が思ったことを口にできるようなふたりでいたかった。
これからの俺の人生を隣で歩いて欲しい。
大きな荷物を背負う俺を、いつも笑顔で迎えて欲しい。
しかし……思っていたよりもチャンスが来るのが早かったな。
面倒な問題がきちんと片付いてからと思っていたけれど、好きな女を自分のものにするチャンスを逃すほど馬鹿じゃない。