強引上司の恋の手ほどき

課長に連れられて屋上へとやってきた。

ビルの合間だけれど、青空が見えて気持ちがいい。沈んだ気持ちが少し回復した気がする。

「で、どうしたんだ?」

一つ置いてあるプラスチック製のベンチにふたり座ると、課長が心配した様子で話しかけてきた。

できるだけ明るく、何でもないことのように話す。

「私、またやっちゃいました。彼の都合も確認せずに……バカですよね」

髪を耳にかけながら、笑ってみるがなんとも情けない。

「はじめて、人に作ったお弁当なんだけどなぁ」

言ってみて、もっと情けなくなった。

「出せよ、弁当」

「え?」

「いいから、出せって」

まごまごしている私の手から課長が、お弁当の入ったバックを奪う。

「ちょっと……」

「お前のは別にあるんだろ? お前の初めての弁当、俺が食ってやる。嬉しいだろ?」

課長は私の返事なんて待たずに、バックからお弁当を引っぱり出して蓋をとった。

私も一緒に開いたお弁当を目にしたのだけれど……。
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