強引上司の恋の手ほどき
第一章 恋愛処女は辛いよ
《第一章 恋愛処女はつらいよ》
入社四年目の四月……私に初めての彼氏が出来た。
出会いはちょうど一年前の仕事中だ。
***
うーん。どうしてここの数字があわないんだろう。入力ミス? でも何度も見直したのになぁ。
私は手元の資料とパソコンを何度も見てため息をついた。
「やっぱりどっか違う。はぁ」
ここまで合わないとなると、もっと先のデータから読み解かないといけない。できればやりたくないが、この数字が合わなければこの仕事は終わらない。
私が勤める【JET電機株式会社】は業界第五位の電機メーカーだ。
巨大な工業用コンピューターから家電まで多くの商品を取り扱っている。
そしてそこの経理課に私のデスクがあった。
大学を卒業してここに就職していらいずっとここで経理を担当している。
「あの、君悪いんだけど、これお願いできるかな?」
カウンターから声をかけられて、立ち上がる。そこには見慣れない顔の人がいた。
「はい、えーっと」
あれ、見たことない顔だ。どこの部署の人だろう?
仕事柄、いろんな部署の人とやりとりをする。本社にいる人間ならある程度は把握していたつもりだったのに。
私が思っていたことが、そのまま顔に出ていたらしい。尋ねる前に相手が先に答えてくれた。
「あ、そっか。はじめましてですよね。先週大阪支社から営業一課に異動してきた中村隼人(なかむらはやと)です」
あ、営業事務の女の子たちがロッカーで噂してた! たしかに噂になるくらいかっこいい。
少し長めの黒髪が綺麗に整えられていて、ニッコリと笑うと少し目尻にできる皺が彼のもつ優しい雰囲気にぴったりだ。スーツもきちんと着こなしていて、清潔感あふれている。