浸透
紀葉夏を家に送り、自分の家に着いた頃には、日が暮れていた。

誰もいない家で、
俺は台所に立っていた
蛇口から熱湯を出し、右手に注ぐが、感覚がない。

それに血液が流れているのか分からないほど、白くなっている。

まるで他人の手のようだった。

これじゃあペンも握れそうにない。

もう開いてる病院なんてないだろうな。

深く考え過ぎないように、平静を装い、晩飯を食べてすぐに寝た。
暑さに当てられて見た幻覚だった。

明日、目を覚ませば元通りだ。

自分に何度も言い聞かせた。

朝、その異変で目を覚ました。

手が白いだけでなく、細くなっているのだ。
爪の形も変わってきている。

目立っていた切り傷も無くなっていた。

俺の手じゃなくなってきている。

そこからどうやって病院に向かったのか、分からない。

「こっこれは・・・」
老医師は言葉を失いながら、俺の手を診た。

「とりあえずレントゲンを撮って見ましょう」

結果を眺めながると、医者は顔色も失った。
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