浸透
「てっ手が変形してきている」

「何かの病気ですか?」

「いや、これを症状と呼べるのかどうか、私では分からない」

何かの病であって欲しい位だった。

「とにかく紹介状を書こう。ここでは設備が足りない」

医師がペンを持った時だった。

一瞬、手に猛烈な痛みが走った。

「うっ、ぐぐ」
痛みが声に出ず、その場にうずくまった。

「どうしました」
老いた医者が緩慢に歩み寄ってきた。

痛みが右手から腕にのびてくる。

「うっ腕が」
医者は目を見開いて、驚愕を伝えた。

腕まで白くなっていた。

「侵攻している」
囁くように言った。
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