友達になるということ




いつになく優しい椿くんの声のおかげで、あたしも素直に自分の非を認めることができた。


「……それと、椿くん」


「何?」


あたしは、椿くんの目をしっかりと見て、少し笑顔を浮かべて言った。



「ありがとう。昨日のあのあと、あたしのこと庇ってくれて……」



思えば、椿くんに笑顔で話したのはこれが初めてだったような気がする。今まで、椿くんに毎度のようにイライラさせられていたから。


だからかわからないけど、椿くんが心底驚いたように目も口も開けたまま、ぽかんとしている。


もしかしたら、椿くんは根っからの悪い人ではないのかもしれない。


きついことを言ってくるのは、本当にただ、あたしの“友達”に対する態度が気に入らないからで、だからあたしのことも嫌いなだけ。


だけど、そんな嫌いなあたしにまで、必要以上に傷つけてしまったと思った時はこうして謝ってくれる。


あたしは、第一印象のせいで、椿くんという人を少し誤解していたのかもしれないな。



< 101 / 339 >

この作品をシェア

pagetop