友達になるということ




我ながら、最低だと思う。
スミレの優しさを踏みにじる行為だし、芹香のことだって裏切っている。


でも、人間は裏切る生き物なんだから、あたしが誰かを裏切ったところで、どうせ誰も文句なんか言えないでしょ?


芹香だって、あたしがいないと、なんてLINEでは言ってたくせに、結局陰ではあたしの悪口を言ってたんだから。


だから、おあいこ。


「どうしたの、なずなちゃん?」


話を遮られたスミレが、不思議そうに首を傾げる。


あたしを一切疑っていないような、汚れのない純粋なスミレの目。
それを前にして、正直少し良心というものがチクリとした。


でも、それを振り払うように首を横に振ると、あたしは決意を固めて口を開いた。


「実はね、スミレに相談があるんだ。芹香のことなんだけど……」


神妙な面持ちで、俯き加減で。


芹香に負けないぐらい完璧な演技で臨んだあたしだったけど、予想もしていなかった人物に阻まれてしまった。



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