友達になるということ
「……違うよ。その逆だ」
耳に届いたのは、そんな言葉。
大声をあげたのと、涙が出てきたのとで、息があがるあたしを、まるで落ち着かせるみたいな穏やかな声だった。
その声の主は、まぎれもなく椿くんで。
「ほっとけるわけないだろ」
「え……」
椿くんは、悲しそうに笑っている。
それから、自分のシャツを掴んでいるあたしの手を包み込むように握り、その手を引き寄せると、あたしを自分の腕の中に閉じ込ませた。
つまるところ、あたしは椿くんに抱きしめられていた。
普段なら抵抗するところだけど、腕に力が入らなくて動けない。
背中をさすってくれる手の大きさや、包み込んでくれる腕の強さ。
「また……無駄に水分流しちゃってさ……」
落ち着かせてくれる声の低さも、全部。
温かくて、優しくて。
「今にも壊れそうなのに、そんな春風さんのこと、見て見ぬフリしろっていうほうが無理な話だよ……」
追い討ちをかけるかのようなその言葉に、涙が止まらなくなってしまった……。