友達になるということ




顔をあげてみれば、その階段の先には重い両開きのドアがある。


ああ、無意識にこんなところに来てしまっていた。


その階段は屋上へと続くもので、ぼんやりと考えながら足の赴くままに進んでいると着いてしまっていたらしい。


まあ、一人になれるなら好都合だ。


「よ……いっしょ……」


重いドアをゆっくりと開けると、途端に外の風が校舎内のほうへと流れ込む。


その風の強さに一瞬目をつむり、おさまった時に目を開けると、あたしは言葉を失った。


壁に向かってボールを蹴り、跳ね返ってきたそれをまた蹴る。


トントンという一定のリズムでそれを繰り返しているのは、椿くんだった。


あれ?何でここに椿くんがいるんだろう。
これから部活の朝練のはずで、しかもついさっきまで教室に居たのに……。


頭上に疑問符を浮かべていると、また強い風があたしの真正面からやってきて、同じようにあたしはとっさに目を閉じる。


再び目を開けた時には、椿くんの姿はどこにもなかった。



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