現妖世捕物帖

｢お帰りなさいませ、雪凪[ﾕｷﾅ]様｣
｢お帰りなさいませ｣

数人の者が仰々しく出迎えていた。

｢ただいま、何？慌ただしいみたいだけど｣

雪凪と呼ばれたものは着ていた羽織を渡しながら尋ねると、一人の者が答えた。


｢はい、何でも妖狐族の方が今からいらっしゃるとかで・・・・｣
｢妖狐族？なんでまた｣
｢申し訳ありません。私共にはそこまで知らせは来ておりません。｣
｢そう、ありがとう。父様に聴くわ｣

女中たちと別れた雪凪は
一人の者が答えた｢妖狐族の方が・・・・｣という言葉に妙な違和感があった。



妖狐族。
それは此処、妖世[ﾖｾ]では圧倒的な『力』を持ち、古くからこの世界に棲み逝く妖たちを統括している一族。
滅多な事、縄張り争いや大事じゃない限りその一族らは、干渉しない。


なのに、何故？
平和過ぎる程に何もない今、妖狐族が来る意味が解らない雪凪は、その答えを知る唯一の者である父のもとへ足を運ぶのであった。