動き出した、君の夏
「…なん…で…打てねぇんだ……ッ」

震える夕の語尾が強くなった




「村松…まだ投げれねぇんじゃ…」

瑞希が呟いた



『……うん』

そうだよ

投げれるわけないじゃん
打てるわけないじゃん

怪我して、1日だよ?
いくら地区予選が近いっていっても、その手で練習したらダメだよ








「……っそ……言われたまんまで…ッいいのかよ……ッ」







《チームが勝つんなら、耐える》




そうだ
何勘違いしてたんだろ
夕が、耐えられるわけないのに
野球が大好きな夕が、故障でマウンドに立てないのは、耐えられるわけないのに



ぽたぽた

栗色の土の上に小さな雫がシミを作った
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