動き出した、君の夏

都大会優勝

「俺等さ、都大優勝したぜ!!」
『知ってるー。だって見に行ったもん』

地区予選――都大会の終わった次の週の月曜日
2日前から夏休みに入っていて、あたしの部屋で夕と2人で勉強中
…夕はベッドに寝転んであたしのマンガとか読んでるんだけど…;

「…千夏って真面目に勉強すんのな」

夕があたしのノートを後ろのベッドの上から覗き込んだ

『…夕が不真面目すぎんじゃん?』
「ハハっ」
『いや、「ハハっ」じゃなくてですね…』

アナタ野球はできるけど相変わらず勉強ダメなんだから…

「いちお真面目にやってんだけどなー」
『気持ちよさそうな顔で熟睡して、何が真面目だ(笑』
「もーベンキョウはダメなのなー俺ー(笑」
『じゃあ、野球で推薦貰いなよ?』
「俺が推薦貰えたら、千夏だって貰えんだろ~?」
『いや、インハイで決勝行かなきゃ;』




かりかりかり

(あたしの)シャーペンがノートに文字を刻む音とセミの声だけが、部屋に響いた


「千夏」
『んー?』

背中を向けたまま答えた

「俺等、都大優勝したぜ」
『知ってるってば』
「俺、レギュラー復帰したぜ」
『知ってる』
「俺、1番で4番バッターだぜ」
『だから知ってるって』













『はぁあッ!!!!????』
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