動き出した、君の夏

陸上部エース

「位置について」

ぐっぐっ。と強く膝を押してスターティングブロックに足を置く
スタートラインの白い線ギリギリに手を置いてかがみ込む
全身を耳にしたつもりで、神経を研ぎ澄ませる

吹き抜ける風に前髪が舞って鬱陶しくなっても気にしない
次の合図を待ち続けた

「用意――」

足を伸ばして、腕を伸ばして、腰を高く持ち上げた
かなり不安定な体制で、スタートするエネルギーを後ろ足の右足と両手に溜め込む



「ドン!!」

同時に雷管が耳元に鳴った
耳になった全身が反応した
右足でスタブロを強く蹴って
両手で地面を押し返した



低い大勢からどんどん加速していって、60mを超えた辺りからトップスピードになった
そこから先はスピードを上げようなんてもがかないで、このスピードを持続させる事に全体力を使い切ってフィニッシュ





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