動き出した、君の夏

春の甲子園優勝

ぱらぱら

手帳をめくる
【5月13日】の日付には、大きくアカマル
そのアカマルを見ると
自然と頬の筋肉がゆるんで、だらしないニヤニヤ笑いになった
口から気持ち悪い笑い声まで漏れてくる

『ふふ…ふへへへへへ』
「千春。キモい」

瑞希にぺしっと頭をはたかれた

『って千春じゃない!!』

いつまでそのネタ引きずるつもりですか!?

「で、何その笑い方」
『何…って…あたし達ショートスプリンターの季節が到来したからでしょー!!!!』

「…は?」

つい興奮して大声で叫ぶと、瑞希は呆気(あっけ)に取られて固まった

『だってさ!!4月までずっと…体力づくり体力づくりで…』
「そーだね」
『マジでそろそろ限界だったんだよ!!あたし絶対長距離向かないもん!!』
「陸上万能人間がよく言うよ」

ハッと鼻で笑われた

『…で!!5月ですよ!!』
「そーだね」
『大会ですよ!!』
「そーですね?」



『タータンで走れるじゃないですかぁぁぁ~~っ!!!!』
「そーじゃんかぁ~~~~っ!!!!」

瑞希がいつものテンションになって、あたしの両手を強く握り締めた

「オーイそこの陸部お2人ー」

ドアの方から、裕樹の声がした
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