色紙と一雫
リビングにある電話機にさっきの手が触れる。
変だな、電話機に嫉妬なんて。
俺は義理の弟が大嫌いだ。
嫌いだから、憎いし哀れだ。可哀想だとも思ってしまう。
他人として見ている俺が兄なんて呼ばれていたさっき。

「…あ、もしもし…けほっ警察で、すか?げほっ。」

あれじゃ、警察も聞きにくい。
俺だって早く此処から抜け出したい。
義理のお前の為なんかに動いてやれない。

「もしもし、すみません。電話変わります、羽原 奨です。
あの、母が…えっと、息をしてないんです。はい、お願いします。」

俺は真っ白な壁相手に何を言ってた…?
自分でも分からなくなって義理の弟に顔を向けた。
咳で落ち着いたのか、涙目で俺を見上げる。

何だよ、流すのか止めるのかどっちかにしろ。
俺を見たまま涙を流す。抑えようと肩と頬が上下する。
視線の行き場に困って左右を見渡して、最終的に足へ視線を落とした。
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