おでこにキス。
西洋堂にて
西洋堂は、高校から自転車で20分くらい行った商店街の一角にある、

昔ながらの洋菓子店で、店の奥には小さな喫茶スペースがある。


その、喫茶スペースの奥、二人掛けのテーブルが私達のいつもの席。


「まだあったー!!懐かしいなっ!」


今でも変わらないその佇まいに嬉しくなる。


店の入り口のショーケースでケーキを選ぶ。



昴はチーズケーキ。
私はモンブラン。


いつもそれだった。


私は、モンブランを頼んだ。


「せっかくだし、奥の席座りたいな…」


そう思って奥の席を見ると、


空になったグラスと、ケーキ皿がのっていた。



「あーごめんなさいね!今片付けるからねっ!!」


そう言ってお店の人が急いでテーブルを片してくれた。


すれ違い様に見えた、空のケーキ皿を見て一瞬、ドキッとした。


昴も、食べた後のケーキの銀紙を


折り紙のように可愛く畳んでいた。


「……まさかね。」


下げられたお皿の上にも可愛く折られた銀紙が乗っていたからだ。



< 11 / 29 >

この作品をシェア

pagetop