おでこにキス。
『この場所』
西洋堂を出ると、夕陽で真っ赤に町が染まっていた。


「あの公園に行ってみようかな……」


あの公園というのは、私の家よりもさらに坂を登ったところにある公園で、


別れを惜しむように、私達はデートのあとは、必ずと言っていいほど、最後はその公園で過ごした。


自転車をおしながら坂を登って行く。


この公園に来るのはいつぶりだろう。


そうだ。


昴の出発の日だ。


公園の入り口に自転車を停めて中に入っていき、ブランコに腰かける。


昴ともこうやって並んでブランコに座りいろんな事を話した。


昴が、建築の専門学校へ進むこと。
私は、近くの短大に推薦で合格したこと。


『俺さっ!すっげー有名な建築家になって梨子と俺の家を建ててやるからな!』


太陽みたいな、そんな笑顔で昴がそう言った。



「………嘘つき。おいていったくせに。」



違うな。


専門学校を卒業する年の秋、昴は二人でいるときも考え事をしている事が多くなった。


たまに、遠くをみていたり。


そして冬の始めには、いつも何かを言い出そうとしていた。


私といることが苦痛なのかと思った。

昴は、変わってしまったの?


今ならわかる。

あの時、変わってしまっていたのは私だったんだ。


高校生の私ならきっと、昴が何かを言い出そう、伝えたいなら、きっと伝えてくれるまで待った。


昴の話に耳を傾けた。


でもこの時、短大を卒業する年。


私は、就職活動に必死だった。


正直、なかなか伝えてくれない昴に嫌気がさしていた。


昴が何か言い出そうとしていても、聞かなかった。








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