おでこにキス。
5年後の8月20日
8月20日。



「うん!いいじゃないの!!さすが私の娘だわー。ねぇお父さん。」


「あぁ。」


お父さんが、私の方を見て微笑む。


今日は、夏祭りの日。


お母さんに浴衣を着せられた。


お母さんの若いときのものらしい。


白地に、青、紺、紫の朝顔が描かれた大人っぽい浴衣。


「じゃあちょっと、まわってこようかな。」


家を出ようとするとお母さんが200円渡してくる。


「あんた、ヨーヨー釣り好きでしょ?」


「もぅ。いくつだと思ってんの。」


笑いながら、受けとると



「ついでにいい男でもつっといで。」



そうにやっと笑った。



家を出てお祭りをしている神社へと向かう。


歩きながらぼんやりと今日の事を考える。


昨日あんなに感傷的になっていたのに今日はすっかり覚めていた。


だって朝になり、緊張したのも束の間。


あることに気がついた。


「………時間を聞いてない。」


そう。現実はやっぱりドラマとは違って。


あの瞬間に、時間までは約束していなかった。


「うん。やっぱり、現実はこうだよね。」


そこで覚めてしまった。









< 19 / 29 >

この作品をシェア

pagetop