新選組と最強子供剣士
目の前にいる少年は、こんな目をするような子だったのか。


そう山南は、心の中で苦笑いした。


山南は今、目の前の少年に対して恐怖を感じさせられている。


睨みつけている目は、まるで獲物を狙う狩人のようだと思った。


見下されているのが分かる。


だが、その身に纏う威圧感のせいか、言葉が出なかった。


山南は、初めて山崎と沖田の恐怖を本当に理解したのだ。


まるで蛇に睨まれた蛙のような気持ち。


「その所司代?って組織がどれだけ権力を持っているかは僕は知らないけど、ずっと手柄とられたら新選組は近い未来なくなるよ?」


新選組がなくなる。


その言葉を聞き、山南は剣壱を睨みつけた。


貴様に何が分かる?


そういう思いを込めて。


だがそれでも、剣壱が萎縮することはない。


「君は新選組が無くなるというのですか?」


「このままじゃね。文武両道な山南さんならわかるでしょ?」


呆れているような目を向けられ、山南もさすがに堪忍袋の緒がきれた。


睨みつけている目をさらに鋭くし、剣壱に問いかける。


「君はまだ生きてたったの16年でしょう。それもこの時代で生きていない。そんな君が、幕府の何を知っているというんですか?」


さすがに大人げないと自覚した。


自分から新選組のことを聞いたのに、この言葉は理不尽だと理解していた。


しかし、一度言ったものは取り消せない。


ハッと冷静になった山南は、謝罪しようと慌てて剣壱の顔を見なおす。


だが、剣壱の顔を見た山南は、出かけた言葉を喉でつっかえさせた。


ゴミを見るような目。


その表現が、一番最適だと思ってしまう。
< 156 / 416 >

この作品をシェア

pagetop