白の王
この学園では、主に午後に実技科目が行われる。
新年度が始まって1ヶ月。練習場では6年目の学生たちが生涯使役することになる契約精霊を呼び出す授業を行っていた。

精霊は魔法使いが持つ魔力に反応し、大きな力に変えてくれる存在とされている。
契約精霊というのは、主となる魔法使いに一番近い精霊になることでより大きな力をもたらしてくれるものだ。上位のものほどヒエラルキーの高い生き物の姿で現れる。

今日だけは上位クラスも落ちこぼれクラスも関係なく、6年生は練習場で契約精霊を喚びだすことになっていた。
儀式と召喚の術式は既に習っている。
授業が始まってしばらくすると、まばゆい光と動物の姿をとった精霊が至るところに現れ始めた。


やっぱり今日も欠席か、と名簿にばつ印をつける。6年Pクラス、通称落ちこぼれクラスの担任、グレイ・マナフは自分の授業では一度も見たことのないリッカ・ブランを思って深いため息をついた。

グレイの担当科目は魔法基礎【実技】である。【理論】の試験は常に上位だと聞いているのに、自分の授業には顔も出さない。
頭はよくても魔力値が低いのか、それとも俺の授業が嫌いなのか。いやでも戦闘訓練にも出ていないし、俺が嫌いとかじゃないはず。と日頃からリッカを気にかけているグレイはそれでも今日は来るという確信があった。
というのも、この契約精霊の召喚というのは魔法使いにとってとても重要な儀式だからだ。召喚した精霊でその魔法使いの素質が浮き彫りになる。この学園に通い始めた生徒たちは6年目のこの授業に大きく関心を寄せている。
いつもは来ないリッカも今日だけは来ると思っていた。

気を取り直して召喚に臨む生徒たちを見て回る。
皆が召喚する精霊たちは本当に様々。色んな授業を組むが、正直これが一番楽しい。
猫に針ネズミに蛙に穴熊。色んなものが練習場を埋め尽くしている。
この分だと授業時間内に終わりそうだ。
あとでリッカは呼び出しだなともう一度ため息をついた時だった。

ドッ

体の芯を揺さぶる大きな揺れが走った。
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