よるにひとり

相手の携帯は電源が入ってないらしく、もう返事をする気はなさそうだ。









「一杯どうだ」

「あ、いただきます」


勧められるままに焼酎を飲むと、上司は今回の企画の手柄を堂々と話し始めた。


しかし、
頭は“いいの?”の一言でいっぱいだった。



酒の勢いで盛り上がっている同僚との話も、ぼーっとどこか遠くで聞こえるようで頭に入らない。


時刻は午前1時。


明日は休みだ
どうやら二次会のカラオケの話を始めたらしい。


 “いいの?”

が声で再生される。



「おい、おまえ行くよな」


調子のいいやつが聞いてくる。




“いいの?”






「あぁ......うん」






みんなで会計をすませると

といってもほぼ上司達だが、


店を出る。



凍てつく道路を足取りも軽く歩いていく中一人、
足が進まない。


「おい、どうした」


何人か振り返る。



「........。俺、やっぱ帰るわ、悪い」


「ええ、まじかよ。ってかお前家そっちじゃないだろっ」




後ろを見ずに手を振ると
帰路を急ぐ




雪が降っていた
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