よるにひとり
スーパーのビニール袋はまだ玄関に置きっ放しだ。
そろそろ取りに行こうか
そう思いながらリンゴをかじる。
暖かい部屋の中で
寒い玄関に行くのも腰が重くなってしまう。
いっそこのまま寝てしまおうか
そうしてまた一口。
りんごの刺さったフォークを片手に目を閉じた。まぶたの外が眩しいばかりで、考え事が騒がしくなる。
どこからか救急車のサイレンが聞こえてくる。
あの音を聞くたびにどんどん近づいているように聞こえてしかたがない。
今日こそは本当にうちのマンションじゃないだろうか
そう思うと
救急車はまるで引返すようにサイレンを小さくして遠退いていく。
妙な好奇心が音と一緒に引いていった。
最後のひとかけらを口に入れて
テーブルのりんごに目をやると少しばかり茶色くなっていた。