琥珀色の王太子様に愛されすぎて困ってます!
―――そして、あの夜会で。
いつまでも私に声を掛ける素振りを見せないものだから、つい話しかけてしまったのだ。
本来なら私から声を掛ける事はまずありえない。
でも、話しかけずにはいられなかったんだ。
いつもは遠くで、囲まれた令嬢の間から見るだけだった彼女が目の前にいる。
遠くで見るよりも瞳が大きくて、ぽってりとした唇が可愛らしかった。
とにかく名前を知りたい。
彼女がどこの令嬢なのか。
どんな名前なのか。
その名前を呼んでみたい。
その衝動に駆られた。
でも私の願いは叶うことなく、彼女は逃げてしまった。