琥珀色の王太子様に愛されすぎて困ってます!
「お嬢様、お城の方がいらっしゃいました」
グリムの声が、扉の向こうから聞こえます。
「ついに来たのね・・・」
私は大きく深呼吸すると、椅子から立ち上がります。
もうこの屋敷に戻れないかもしれない。
この部屋にも・・・。
そんな思いで一通り部屋を見回します。
そして最低限の貴重品の入ったバッグを一つ手に持つと、扉を開けました。
「お待たせ、グリム」
「お嬢様・・・・。なんと声をかけていいか・・・」
「グリムは、お父様とお母様の事をこれからも助けてちょうだい。お願いね」
「はい、わかりました。お嬢様もあまり無理をせずに・・・」
「私は・・・大丈夫よ、多分ね」
心配掛けまいと笑顔をなんとか作ります。
が、グリムには気付かれているようで、切ないようなそんな表情を浮かべていました。
ごめんなさい、グリム。
あなたにそんな顔をさせちゃいけないってわかっているのに。