恋して 愛して 乱して
「はぁ……」
ドクンドクンと打ち付ける胸。身体の奥底から引き出される熱。視界が揺らいだ。
なん、で…
ぽたりと落ちた涙はあの日に流した涙と同じ。
まだ、本人だってわからないのに
人違いかもしれないのに…
頭の中を駆け巡るのは大好きだったあの人の声で。
「……」
右足が震えだし、廊下に座ってしまった。鳴り止まない鼓動が痛い。
でも……
「た、高木さん…?」
「…豪太くん…」
ふと見上げたらそこには豪太くんの姿があった。
「な、何か、あったんですか?」
そして豪太くんは膝をついて私の涙をそっと自分のハンカチで拭ってくれた。そう、豪太くんは今の私の同僚でもあり、同期の大切な彼氏。
「…ふ…っうぅ…」
「たかっ……真央さん…」
私の熱を帯びた左頬にそっと綺麗で男らしい手が触れる。
「ん…」
「…何でも言ってください…ぼ、僕は真央さんの…彼氏、ですよ…?」
そう言って豪太くんは震えた唇で私の唇に蓋をした。
「…ん…」
「………だから」
「いた」
事件は突然起こった。
「…っ!」
前方に見えたのは背の高くスラッとした体型をして、整った顔を持つスーツ姿の男。
「…ぁ…」
「…久しぶりだね、真央」
その艶やかな瞳が私を見下ろした。