恋して 愛して 乱して
どっくん…
そのテノールの声に私の耳は犯されそうになる。そう、昔みたいに…
真央って…
身体が熱を持ち始めてしまう。
「んっ…ぅ…」
私はぎゅっと、豪太くんの服の裾を掴む。それに応えるように、豪太くんは裾を掴む私の震える手を握りしめた。
「…どっ、どちら様、ですかっ」
豪太くんなりに強い口調だったとおもう。するとその人は同性も息を飲むような妖艶な笑顔をして頭を下げた。
「…申し遅れました。翌日からここの病院で脳外科医として働かせていただきます、杉村広貴と申します。お世話になります」
そう言って再び頭を下げた。
杉村…広貴…
私は豪太くんに身を少し寄せる。豪太くんは私の手を強く握り返しながら、頭を下げた。
「こっ、こちらこそ」
杉村広貴は目を細めてほほ笑み、私たちに背を向けた。
「……では」
彼の姿が見えなくなった頃、豪太くんは私の方を再び向く。
「真央さん…」
「ぅ…ふぅ…」
ドクンドクン
私の胸は鳴り続け、過去の記憶がフラッシュバックする。背中に嫌な汗が流れ、ゾクリと身を震わせた。
「…真央、さん、今日、う、うちに、泊まってください…」
私は豪太くんの胸に額を付け、小さく頷いた。
こんな再開の仕方だなんて……
何かに気付いたのか、豪太くんは私の腰に手を回し、抱き寄せた。