恋して 愛して 乱して
「ぁ…」
びっくりしすぎて私は彼の目を見据えることしかできなかった。ただただ、焦る。
杉村先輩……
彼は私を見下す黒石のような瞳。その瞳が怖いくらい綺麗で、私の鼓動はいつかのようにドクドクと音をあげる。
「ごっ、ごめん、なさい…」
私は背中を壁につけて横にずれる。妙にその壁が冷たく感じるのはきっと、私の冷や汗のせい。
どうしよう……
まさかこんなところで…
彼は締まりそうなドアの隙間に手を伸ばし。
「酷い顔」
そう言った。
ん……?
今何が起こったのか、何が何を言ったのか、とにかくよくわからなかった。
酷い顔…
酷い顔……
酷い顔………
酷い……顔?
カァっと熱がこみ上げ、私の顔は真っ赤になった。けど、何も言えなくて目を泳がせるだけで。
こ、この人、何言って……
「…今、何言ってんだって思ったでしょ」
「っ!」
バレてたの?!
彼は少し口元を緩め、目に弧を描いていた。