恋して 愛して 乱して
高木、さん……
パタンと閉まった扉を見つめ、私はキュっと締め付ける胸を握りしめた。
なんだかわからない
ただ、違和感があって…
「…っ」
痛い、胸が、痛い
視界が揺らいだ。ジーンと目の奥が熱くなり、呆然と立つことしかできない。
『よろしく頼むね、…高木さん』
苦しいくらいに頭の中で回る彼の声。
高木さん…だって
初めて苗字で呼ばれたなぁ
あはは……
びっくりしちゃった
バカだなぁ私
何を期待してたんだろう
でも、結局無理なものは無理なんだ
しょうがないか…
だってもう
…私たちは恋人じゃない
首からかけたペンを握り、進行方向を変えた。俯きながら、足を進める。
仕事、だから
それが今の私を慰められる、唯一の言い訳だった。