恋して 愛して 乱して
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出勤してからすぐ、俺はくも膜下出血の患者に関する書類を婦長から渡された。
「杉村先生、よろしくお願いします」
年期があり、少し丸みを帯びている身体をした、いわゆる、ポッチャリ婦長。俺は営業スマイルで礼を言い、更衣室へ向かった。
「血液状態は…」
患者の身体の状況を確認する。それを元にオペの仕方、ケアの仕方の方法を練る。
数値が低いな…
これじゃああれは使えない…
だとしたら…
俺は髪をクシャッとかき分けた。
長くなりそうなオペだな…
集中しなければ
中央階段を降りたところにあるロビーには、たくさんの患者が出入りしたり、テレビモニターを前にしたたくさんの椅子に患者が腰掛けて話している。その中を笑顔を見せながら通過すると医療事務が見える。俺はすぐにあいつを思い浮かべてしまうんだ。
真央…
俺はあいつに酷いことをした。いつも素直に話してくれるあいつに、本当のことを言えなかったことを未だに後悔してる。本当の、ことを…。
俺は目線を書類に移した。