恋して 愛して 乱して
廊下を歩く先輩の後ろをぎこちない足取りで歩く。
どうしよう私
" 杉村先輩 "と昔言っていたあの頃のように、杉村先生のことを呼んでしまった。
背筋がそわそわしながら、自分の後悔を飲み込む。
チラッと見る先輩の背中。それは昔の記憶を呼び覚ますもので。
先輩…
どうして先輩は突然別れを告げたんですか?
少しくらい、相談してくれたってよかったじゃないですか…
目の奥が熱くなる。
嫌なところなら、直した…
してほしいことなら、なんでもした…
私は…ただ
先輩の、笑顔の理由になりたかった…
歪んだ視界に脚がもつれる。だから、白衣を着た先輩の背中が、空手の道着を着たあの頃の先輩に見えたんだ。
手を伸ばしても、もう届かない
先輩は、杉村広太は戻ってこない
自分の溢れ出す熱いものに気付いた時には、既に落ちる雫が書類を滲ませていた。