恋して 愛して 乱して
少しして角を曲がり、下り階段に足をかったとき、突然止まる先輩の背中に頭をぶつけた。
「ぁいたっ」
見上げると、先輩の瞳と視線が絡まった、だけど。
先輩?
その目はどこか悲しそうに見えた。途端胸がキュッと締め付けられる。
「あの…」
どうしたんですか?それが言えずに喉に詰まった。先輩は何も言わずに前を向き、階段を下っていった。
先輩、どうして?
どうして、そんな悲しい顔をしたんですか?
その背中に心の中で静かに問いかけた。
「さっきの話し合い、理解できたか?」
先輩専用のワーク室でさっきの話し合いの事を振り返った。私は身を小さくするしかなかった。なぜなら。
「すみません、さっぱり…」
「ちゃんと聞いてろって、ばか」
「ば、ばか…?」
「そう、ばか」
「なっ」
怒られる事は分かっているから。先輩は相変わらず、怒ると怖くて、背筋が凍りつきそうになるんだ。
「…まったく。だろうとは思ってたけど、やる気あるのか?お前」
スイッチ、入っちゃったぁぁ
「だいたい眠そうにしてる時点でアウト。いいか?前からは丸見えなんだぞ?俺だったから良いとして、違うドクターだったら話し合い中に追い出されるぞ」
「はぃ…」
もう、私から見て先輩は先生ではなく、鬼にしか見えない。正論だから何も言えなくて。
「まったく…」
「うぅ…」
ごめんなさい、と、頭を下げる。
やってしまったぁ…
再会したっていうのに、こんなことになるなんて
それにしても怖いなぁ、先輩……
目をぎゅっと瞑ると顎にそっと先輩の綺麗な指が触る。
えっ…?
反射的に上を向く。そこには切なそうに私を見る先輩がいた。