恋して 愛して 乱して
次の日の朝、私は豪太くんと時差で出勤することにした。だから私はいつも以上に早く病院に着き、準備をし始める。
更衣室に向かう途中、廊下に女の人の声が響いていた。
「まじー?」
「え?どんな感じだった?」
2人をぐいぐい質問されてる女性。見たことがある人で、今出勤したてらしい。
あ…昨日の話し合いにいた…
私は足を止め、角に隠れた。何故だかわからないが、危機感を持った。
あの人…
可愛くて華奢でスタイルが良くて胸が大きい看護師だった。同じ看護師であろう2人に向かって笑顔を作って言う。
「広貴先生ったら、すんごーく激しくて、気持ちよかったなぁ」
甘い声でそう言った。
え?
「いいなー、私もシたぁい」
「私も〜」
「うふふ、褒めてくれたの、この胸」
可愛い看護師は自慢気に話を進める。
「それに、広貴先生もいっぱい感じてくれてたし、まぁ、時間の問題?」
時間の問題。それはきっと付き合うまで、ということだろう。
広貴先生なんて…
名前で呼ぶ看護師に嫉妬を覚え、私は首を左右に振った。
『真央』
びくんと跳ね上がる鼓動。
なんで…
なんでこんな時に…
笑ったあの笑顔が私の脳を染めていく。思い出せばいつも笑って、私を呼んで…。
私だけだって思ってたから。
「あとぉ」
やめて
「指とかぁ」
聞きたくない
「私を」
もう…
『待ってた』
私は走ってその場を離れた。繰り返される、看護師の甘ったるい声と、テノールの杉村先輩の声から逃げるように。