恋して 愛して 乱して
すると。
「高木せんぱ〜い」
後ろから甘ったるい声が聞こえたと同時に巻きつく白い腕と漂う甘い香り。
「彩ちゃん」
「せんぱい、もう彩、疲れちゃいましたよぉ〜」
そう言いながらくねくねと私に身体を擦り付ける彩ちゃん。
うぅ…
細いくせに胸は大きいんだから…
彩ちゃん、当たってます
「彩ちゃん、当たってるんだけど」
「うふふ♪ わ・ざ・とですぅ」
そう言って彩ちゃんは私の耳元で熱っぽい艶やかな息を吐いた。
「……はぁ…彩、高木先輩に触られるなら…何も望まない……」
「っこ、こらっ…!」
色っぽく囁く彩ちゃんを解くとぺろっと舌を出し、意地悪っぽく笑った。
彩ちゃんは私の2つ下の後輩。ああ見えて彩ちゃんはとても賢くてモノ知り。
1番問題ありな同僚だけどもね
「あ、あのぅ……」
私の前に座った、か弱い男、豪太くんがプルプルと震えた手を伸ばして書類をバサバサと揺らしながら見せてきた。
「た、高木さん、これ、あ、あ、誤ってます……ごめんなさい…」
なぜ、謝る豪太くん
豪太って名前がさぞ、似合わないね
名前負けしてるよ、頑張って
私は書類をる受け取ると、誤りを確認し、豪太くんに謝った。
「ごめんなさい、豪太くん」
「だ、大丈夫です…」
「直さなきゃね」
「あっ、…ぼっ僕が修正しておくので、だ、大丈夫です…ごめんなさい…」
謝らなくていいんだってば
豪太くんはいつもオドオドしてて臆病で、でも目は鋭くてよく気がつく。だけど「太りました?」と言われた時は殴ろうかと思ったよ。
この4人で私の勤める医療クラーク内の仲間は1人を抜かして全員だ。
そう、もう1人は入院している。
歳も歳だし、仕方がないけど、正直、とても寂しいんだ。
でも、その人の分まで、私たちは頑張ってやらなくちゃ
そしてまた、キーボードの上に、指を置き、作業を始めた。