ウソ夫婦
二人で歩き出した途端、後部座席のカーテンが勢い良く開いた。
男五人が「おいっ」と声を上げる。
うそ! あと五人もいるなんて、聞いてないっ。
あすかが首をすくめると、颯太はあすかをぐいっと背後に引っ張った。狭い通路をくる一人目を、力一杯殴り飛ばす。ゴンッという鈍い音が聞こえて、男が座席にすっ飛ばされた。
続けて二人目。大男が、すごい勢いで突進してくる。
身体の大きさが違いすぎるっ。
あすかは颯太の後ろで身を固める。すると背後から、ぐいっと肩を掴まれた。
「あっ」
首に腕を掴まれ、息がつまる。
「あすか、伏せろっ」
あすかはとっさに、男の腕にぶら下がるように力を入れた。勢い余って、尻もちをつく。
颯太は、振り向きざま腰から拳銃を抜くと、素早く構える。
パンッ。
あすかの後ろの男が、うめいてよろめいた。
「颯太、後ろっ」
あすかは叫んだが、それよりも早く大男が拳銃を持つ颯太の手首を抑えた。
狭い通路をもみ合う。
通路の後ろ側から、横の席へ乗り上げて、男たちがあすかに向かってきた。
「逃げろ!」
颯太が、大男の腹に肘鉄をくらわせて、振り向きざま殴り倒す。
「でもっ」
激しく戦う颯太を見ながら、あすかは叫んだ。