ウソ夫婦
夜、一人の部屋に戻される。真っ暗な部屋の中、格子のついた窓から、濃紺の空が見えた。
あすかはベッドに腰掛ける。
結局、もう一度最初から最後まで資料を読んでみたが、何もわからなかった。なぜ、最後の物質に関する記述だけ、全部ないのだろう。
ふと、柳主任がデータを隠したんじゃないんだろうかと、思いついた。絶対に完成させたくない理由があって、データを隠した。柳主任は、それをあすかに託したから、頭を下げたのだ。
『重大な犯罪が行われているその証拠をとってくる』
私は颯太に、そう言ったらしい。ということは、そのデータこそが、犯罪の証拠。それをFBIに渡せば、すべてが終わる。
「ああ、でも」
あすかは小さく呟いた。
それがなんだったのか、まったく思い出せない。
あすかはベッドに横たわり、静かに瞳を閉じた。