ウソ夫婦
「Ready......GO!」
ジェイは叫ぶと、銃を激しく打ち返し始めた。細くが割れるような銃声の嵐。
あすかは、机の影から飛び出した。
身を低くして、全速力で。
後ろは振り返らない。
ジェイが守ってくれている。
柳の部屋に辿りつくと、扉を勢い良く開く。月明かりだけの真っ暗な部屋に滑り込み、必死に扉を閉めた。
つかの間の静寂。
ドア越しに、鳴り響く銃声。
あすかは、はあはあと荒い息で、窓際に置かれた柳の机を見た。
『机の上、動かないコンピュータ』
あすかは机に走り寄った。少し型の古いノート型コンピュータが置かれている。あすかは電源ボタンを入れた。
ぶうんと音がして、コンピュータが起動する。
おかしい、コンピュータは動かないはず。
あすかは困惑して、眉をひそめる。
どういうこと? これじゃない?
気持ちが焦る。まだ銃撃戦は続いている。早くしないと……。
あすかは机の上を見直した。
起動しているコンピュータ。書類のトレイ、ペン立て、セロテープ、写真立て。
写真立ての中の少年は、自分の机の前で照れたように笑っている。彼の机の上には、デスクトップのコンピュータが……。
動かない、コンピュータ。
あすかは、写真たてを手に取り、裏蓋を開けた。