ウソ夫婦

写真の裏に、『Hiroshi, 20141123』と書かれている。

あすかは、ログイン画面で止まっているコンピュータに、アカウントとパスワードとして、それぞれを入力した。

自動的に再起動がかかる。今度はコンソール画面へと切り替わった。

「……別パーテーションにシステムが入れてある」
あすかは、はやる気持ちを抑えて、コンピュータに向き合う。

柳の血で書かれた『パスコード』。ファイルへアクセスするための道標。
あすかは『パスコード』を入力した。

「あった、これ」
二つの保存データ。試しに開くと、抗がん剤の研究データが現れた。最後の物質も、すべて書かれている。一緒に音声データもある。

あすかは、FBIのネットワークへ素早くログインした。

もう少し。あとちょっと。

データをサーバーへとアップロードする。

ゆっくりと転送のパーセンテージが上がっていく。

急いで。早くっ。

『Done(完了)』の文字が出ると、あすかは安堵で大きく息を吐いた。

「やった、これで……」
そこでふと、外の銃声がやんでいるのに気付いた。

「ジェイ」
あすかは扉に走り寄り、そっと開いた。

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