ウソ夫婦
静かな研究室。あすかはジェイの姿を探して、顔を出す。
「ジェイ……」
まさか、やられたなんて、そんなこと……。
あすかの脳裏に、爆発し燃え上がった飛行機が蘇った。
いやっ。そんなの。
もう二度と離れないって、言ったのに。
あすかは部屋を走り出た。研究室の両開きの扉を見ると、誰もいない。いたる所に、銃撃の穴が空いていて、硝煙の香りが強く残る。倒れた男たちは、小さく呻いて時折動く。
研究室の扉にまで来ると、「ジェイっ」と廊下に向かって叫んだ。
「ジェイっ、ジェイっ」
あすかは泣きそうになった。もし、ジェイの身に何かあったのなら、自分を許せない。
「どこーっ?」
「ここだけど?」
暗がりから、声がした。
あすかは肩の力が抜ける。
「フロアにもう奴らがいないか、チェックしてた」
開きっぱなしの右手の扉から出てきたジェイは、あすかの姿を見ると安堵の顔をみせる。
「もうっ、勝手にどっか行かないでよっ!」
あすかは怒って、ジェイの肩を殴りつけた。
「いてっ」
ジェイは笑って、あすかを抱き寄せる。
「できた?」
「うん」
「やっぱりな、できると思ってた」
「でしょ」
二人は目を合わせて、笑いあった。