ウソ夫婦
エレベーターが下がり始める。
頭に銃口を突きつけられて、動くことができない。首に腕を巻かれたまま、あすかは扉に映った自分とキャリーの姿を見続けるしかなかった。
油断した。もう全部終わったと、気を抜いてしまった。
あすかは唇を噛む。
このまま一階に降りて、それからどうするのか。一階には、FBIの捜査官たちがいるはず。囲まれてもなお、キャリーは逃げるつもりなのか。
まっすぐと下降していくエレベーター。
キャリーの腕から、極度の緊張が伝わって来る。
「お前を人質にする」
「そんなこと……うまくいくはずないわ」
あすかは恐怖から声が上ずったが、気持ちで負けたくなかった。
「どうかな。やってみなきゃわからんだろ」
キャリーが、静かな笑みを浮かべた。
あすかは、掲示板を見上げる。
もうすぐ一階。どうする?
「いくぞ」
キャリーの腕に力が入る。
ポーンと音がして、エレベーターの扉が開いた。