ウソ夫婦

「何って……」

あすかの頭は軽くパニックになって、だんだんと支離滅裂になってきた。

「だから、返事をっ。へっ、返事、あの……約束の!」

ジェイがおかしいものでも見るように、眉間にしわを寄せた。
「なんのことだ?」

あすかは、口をつぐんだ。

なんのことって言われても……。
あ、あれ?

「夢かなんかの話か?」
ジェイが心配するような表情を見せる。「それとも、まだ記憶障害があるとか」

本当に夢……だったんだろうか。
あれは、自分の願望が見せた幻で、本当は何も言われてない、とか。

あすかは呆然として、固まった。

すると横から、笑いをこらえるような声が聞こえてきた。見ると、ジェイが身体を折り曲げて、顔を真っ赤にしている。

「じぇ、ジェイ?」

ジェイは、弾けるように笑い出した。

「ちょ、ちょっとっ」
「お前、本当におかしい」
「なっ、なによー」

あすかは真っ赤になって、頬を膨らませる。

「マジで夢かもって、思っただろう?」
「思ってないもん。あなたが忘れちゃったのかと……」

あすかがいうと、ジェイが「バカ。俺が忘れれるわけないだろ」と、あすかの頭をくしゃくしゃっとなでた。

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