ウソ夫婦
「お前とは違うんだ」
ジェイが意地悪そうな笑みを口元に浮かべる。
「あれは……だって……」
「俺のことも、綺麗さっぱり忘れやがって」
「仕方がないでしょ。そもそも、あんな風に髪を染めたり、カラコン入れたりするから、こっちも混乱して……」
そういうと、ジェイが憮然とした顔で腕を組む。
「お前を守るには、日本人にならなきゃいけなかったんだ」
「そうだけど……」
「ヒントはやったよ。でもまさか、染めてないアンダーを見て、丸刈りだって騒ぐとは」
ジェイが、再び笑いをこらえる。
「お前といると、飽きないな」
「もうっ」
あすかは頬を膨らます。また意地悪されている。
「それで?」
ジェイがあすかを横目で見る。
「で?」
あすかは首をかしげる。
「さっき、何かいいかけたじゃないか」
あすかの心臓が、とたんに全力疾走し始めた。
そ、そうだった。どうしよ。なんか、答えづらいよ……。
「あすか?」
ジェイは、あすかの心が全部わかっているかのように、余裕の笑みを見せた。