ウソ夫婦

その夜。結婚三日前。

実家の自分の部屋で、あすかは洋服を脱いだ。下着姿の自分を姿見で見る。蛍光灯の下に、無残にも晒される自分の身体。

ぺちゃん。
とにかく、出っ張ってるところが、ほぼゼロ。

あすかは、泣きたくなるのをぐっとこらえる。

昔から、この体型がコンプレックスだった。とにかく幼児体型。ヒップと言えるヒップもなし。

こ、これは……。大問題かも。

あすかは、タンスの奥にしまいこまれていた「上げて寄せるブラ」を取り出した。試しに着用して、再び姿見の前へ。

あ……なんとなく、谷間がある……かも?

グラビアのように、腕で胸を寄せて、屈んで見る。

ほら、まあまあ、かも。

ちょっと、色っぽい表情なんかしてみる。

あら、イケる。

あすかはふと思い立ち、机の上からペンを取り上げた。胸の谷間に差してみる。

すとーん。

ペンは床に転がって、あすかの脛にぶつかった。

「Noー!!」
あすかは頭を抱えて思わず叫び、その場に崩れ落ちた。

まじでか? ペンが挿さらないなんてっ。寄せて上げてるのにぃーっ。あんなことやこんなこと、できないじゃーん。

あすかは悔しさで、床をドンドン拳で叩いた。

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