ウソ夫婦
バーンッ!!
鼓膜が破れるほどの凄まじい音がして、左側にあった鉄製の扉が吹っ飛んだ。
激しい爆発音の後に、不思議な静寂。
森は、何が起きたのかわからないのか、目を大きく開き、白ブリーフのまま停止している。翠はゆっくりと扉の方向を見た。
舞い上がる埃の中、サングラスをかけた颯太が立っていた。蝶番から外れかかっている扉を、再度激しく蹴りつけると、鉄にもかかわらず扉はドカンと空中に舞い上がった。
「お、お前……」
事態を把握した森が、小さな声で呟いた。
颯太は部屋に一歩入ると、裸同然の翠をちらりと見る。それから素早く自分のシャツを脱いで、翠に投げた。颯太のTシャツが、翠の身体を森の視線から覆い隠す。
声にならない声をあげて、森が翠に手を伸ばそうとすると、颯太は素早く動いて足を蹴った。転がる白ブリーフ男。
呻く森を冷たく見下ろす颯太。森とは正反対の鍛えられた細身の肉体が見える。
もたもたと上半身を持ち上げて「芸術の邪魔をするな」と森が抗議の声を上げた。
「おい」
颯太はサングラスを取ると、デニムのポケットに入れる。それから森の目の前にしゃがんで、顔を近づけた。
森が引きつる。
「翠の肌を見ていいのは、俺だけだ。ふざけんな、変態」
そして、思い切り顔を殴りつけた。
森は大きくのけぞって、反動で床に頭を打ち付ける。そして動かなくなった。