ウソ夫婦
颯太は翠をひょいっと抱え上げる。「裸足だから、担いでくぞ」
「……どうしてここがわかったの?」
颯太の首にしがみつきながら、翠は尋ねた。
「あの変態の携帯に、追跡ソフトをインストールしてある」
「いつのまに」
「それが俺の仕事」
颯太はそう言うと、ちらっと翠の顔を見る。
「もう少し胸が大きいと、よかったのにな」
「は?」
「もう修正効かないだろう、そのサイズじゃあ」
そう言って、にやりと笑った。
「なっ、失礼な……」
翠は颯太の腕から逃れようと、じたばたと暴れた。「おろしてっ、腹立つー」
颯太は笑いながら、翠を落とさないよう、ぎゅっと力を込めた。
外はじりじりと焼けるような日差し。遠くからパトカーのサイレンの音が近づいてくる。車の助手席に無事に到着した翠は、短いTシャツを膝まで力一杯引っ張りながら、いけすかない顔つきの颯太を睨みつけた。
くそー。こんな嫌な男の胸の中を、私が知ってるわけない。絶対に気のせいっ!!
エンジン音で揺れる車内で、翠は頬をふくらませた。