ウソ夫婦

冷房がガンガンに効いた部屋で、寒いだろうに、その格好。

どうでもいいことが頭に浮かんで、翠は頭を振った。

いやいや、問題はそこじゃない。明らかに、他人の旦那にすると大問題なこと、仕掛けようとしてるよね!?

「私たち、視姦サイトで知り合って、夫婦になったの。知ってる?」
颯太を見上げて、軽く首をかしげる。腕に大きな胸を押し付けた。

「私は見られるのが好き。あの人は見るのが好き。理想的な組み合わせでしょ」
愛子は笑った。

「すっごく、興奮するの。度数の高いアルコールを煽ったみたいに、身体が火照って、理性が飛んじゃう。颯太さんも……経験してみない?」

颯太がちらりとこちらを見る。

逃げよう! 今すぐ!

翠は必死に目で訴えた。

颯太が再びニヤリと笑う。
「興味は、あるな」

えーっ。

翠の頭がパニックでぐるぐると回りだした。

「思った通り」
愛子が言う。「颯太さんはこっちの住人だと思ったし、それに……」

愛子が翠を見る。「奥さんも、見るの好きそう」

勝手に、決めつけるなーっ。

翠はジタバタし始めた。とにかく逃げないと。このままだと、颯太とあの女の、よからぬ行為を目撃することになる。

まじ、トラウマだし。

「ほらほら、奥さん、落ち着いて」
宗谷が暴れる翠を押さえつけた。

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