ウソ夫婦
愛子は、颯太をラグの上に促し、座らせた。颯太は抵抗せずに、白い壁にもたれる。
愛子が颯太の膝にまたがった。
翠から冷や汗がではじめた。
やばい、まじでやばい。
大きな胸と、丸いヒップ。愛子が自分の髪を左の肩に寄せて、ねじる。首のラインが、女から見てもセクシーだ。
隣から聞こえる宗谷の息遣いが、心なしか荒くなってきた。翠の身体をゾワっと寒気が走る。
「ちょっとっ、何考えてんのよっ」
翠は必死に愛子に叫んだ。
「頭、おかしいんじゃない?」
愛子は翠を見ると、くすっと笑う。それから、颯太のワイシャツのボタンに指をかけた。
「颯太っ。 何やってんの!? 抵抗しなさい、抵抗っ!」
翠は持ってる力全部を振り絞って、ソファから立ち上がろうとした。
「うるさいな、奥さん。静かにして」
宗谷は強い力で翠を引き戻すと、捻ったタオルで猿ぐつわをした。
「うむむむっ、むむーっ」
どんなに叫んでも声が出ない。馴染みのない柔軟剤の匂いに、吐き気がした。
宗谷が翠の耳に、口を寄せる。
「静かに。これからが、本番だよ。奥さんもきっと、この快感にはまるはず」
熱い息が耳にかかって、翠はおぞましさでぶるっと震えた。
「嫉妬でね、胸がジリジリするんだ。それが下腹部に伝わってね、なんとも言えない刺激になる」
宗谷が言った。
へ、へんたいー。
翠は泣きそうになってきた。