ウソ夫婦
ボタンはゆっくりと外されていく。徐々に颯太の鍛えられた胸、腹部が見えてきて……。
翠は心臓が痛くなってきた。顔を背けようとすると、宗谷に「見て」と顔を両手で挟んで固定される。
すっかり前がはだけて、颯太の色白な皮膚が見えた。愛子は綺麗に整えられた爪で、鎖骨からゆっくりとなぞっていく。翠は再びジタバタし始めたが、思うように力が出ない。弱々しい呻きだけが口から出た。
胸がジンジンして、頭に血が上ってる。慌ててて、焦ってて、涙が出るほど悔しい。
なんでこんなことになってるの? だいたいどうして、颯太は私を助けてくれないの? 必ず助けるって言ったのに……私に危険はないから?
確かに……見るだけ。
痴女とウソ夫が×××するのを……見るだけ……。
翠の目に涙が溢れてきた。
嫌。どうしても、嫌。
理由なんか知らない。
でも、颯太のこんな姿、見たくない。
「キスして」
愛子が颯太に唇を近づけ、ささやく。ここまで身動きしなかった颯太の腕が伸びて、愛子の首に指を回した。
「んーっ!!」
翠は大声で叫んで、力一杯暴れた。後ろに縛られた腕を振り回すと、どしんとソファから落っこちる。慌てた宗谷が手を伸ばしてきたので、翠は力一杯宗谷のアソコを蹴ってやった。
「うぉ」
宗谷が呻いてソファに倒れる。
「けんちゃんっ」
愛子がびっくりした声を上げて、宗谷に駆け寄ろうとするところを、颯太がぐっと腕を捕まえた。
「えっ、ちょっと、タイム!」
愛子が慌てて颯太を押しやろうとすると、颯太は逃がさないとばかりに力を入れた。