ウソ夫婦
ジェニファーのあとに翠もシャワーを浴びた。
翠は長い髪をくるくるっと頭の上で結わえる。それからブラをつけようか考えて「ま、いっか」とやめてしまった。どうせ女同士だし、暑くって窮屈なものはすべて脱ぎ捨てたい気分だから。
「ピザ来てるよ〜」
ジェニファーは、すでにビールを開けて飲んでいる。「はやくはやく」
「はい」
翠は素直にテーブルの前に座った。
「わお。日本のピザ、変わってる。何これ、この黒いの」
「海苔よ」
「ノリ?」
「SEAWEAD」
「おお、なるほど〜」
ワイワイ、騒ぎながら食事をした。颯太と二人で食べるとき、どちらかというと静かだから、女友達と一緒にいるような気分になって、翠は楽しくなってきた。
「ミドリも飲めば?」
ジェニファーが言う。
「うん」
翠は素直にうなずいた。こんな時間は久しぶりだ。
ビールを一口飲む。しばらくアルコールを口にしてなかった。苦いが旨味があって、美味しい。喉越しも爽やかだ。
「ねえ、ミドリ」
ソファに寄りかかりながら、ジェニファーが尋ねる。手にはビールのグラス。
「何?」
「ソウタともう寝た?」
翠はビールを吹き出した。
「わっ。ちょっと、ミドリ〜」
ジェニファーが慌ててタオルを持ってくる。
「ごめん……でも、寝てる?って……あ、眠るってこと?」
濡れてしまったシャツを拭きながら、翠は尋ねた。
「違うわよ。セックスしたか?ってこと」
ジェニファーがしれっと、そう言った。